写真
写真⑥は、干潟や砂洲の育成嵩上げがほぼ完了し、ヘドロ化して消えた干潟が、約70年前の干潟に復活した状況を示すものです。
砂浜に円形砂洲が現れてから約1年3ヶ月で、「浮遊式砂浜育成装置」の作用で、写真⑥及び写真⑦に示されるような、理想的な嵩上げされた干潟地形図が構築されました。
波のエネルギーで圧縮されて一度海底に構築された干潟地形図は、人工的な構造物ができない限り、海面の上昇水位と流れのバランスが自然に保たれ、
また、貝殻、サンゴ、陸地からの砂、海底からの石や養浜砂等の膨大な量の漂砂が干潟や砂浜陸地に永続的に供給され続けて沈殿し、嵩上げされることになります。
したがって、先ずは干潟の育成から始めることが必要となります。
写真④に示される淵流は、干潟の海底上に何本もの窪みを作り、川となって、沖に戻る漂砂を含んだ強い離岸流となり、深場に向かって流れます。
そして、その途中で陸地に向かって走る漂砂を含んだ白波サーフィン波と衝突して干渉消波し、波勢が弱まって漂砂が干潟上に多く淀み、平行砂洲が形成されます。写真⑦はその状況を示しています。
沖に堆積形成される砂洲は、汀線に対して平行に道路のように嵩上げされるという特徴があります。
平行砂洲は、複数形成されていることが確認されており、その結果、干潟上で陸地の防波堤と同じような消波効果を生み出すと考えられ、災害対策に資することになることが期待されます。
2011年9月21日に関東地方を台風15号が通過した際に、干潟の構築嵩上げ効果により、
葛西海浜公園西なぎさの西側半分だけに漂砂(波に揉まれ、細かく砕かれた貝殻混じりの沖の異質砂)が沈殿堆積し、
翌22日に、1日にして長さ300m、幅20m、高さ60cmの写真⑦に示されるのと同じような平行砂洲が、道路のように形成されました(10tトラック約540台分)。
写真⑧はその状況を示しています。西なぎさの東側半分は、浸食されています。
なお、2010年11月6日に設置した「浮遊式砂浜育成装置」は、この台風の影響で干潟に陥没し、
約11か月でその役目を終了しましたが、その間に一度構築された干潟地形図は、地層となって残存し、干潟、砂浜、陸地の嵩上げに寄与し続けています。
写真⑨は、「浮遊式砂浜育成装置」を設置した後約7年経過した時点における状況を示すもので、
そこには、約7年の短期間のうちに、漂砂、沈殿により長さ約300mに亘って高さ約2mの陸地の嵩上げがなされた様子が示されています。
このように干潟の嵩上げが進んで砂浜の保全育成がなされた要因としては、
上空低気圧の吸い上げエネルギー(風)、海面水位の上昇高さ(波)、海底から無限に供給されて海底に沈殿堆積する漂砂
及び「浮遊式砂浜育成装置」の活用が考えられます。
「浮遊式砂浜育成装置」により堤防形に嵩上げされた砂州は、人工的な工作が加わらない限り、地層として永久的に変わらずに残る筈です。
なお、写真⑨に示される区域は、2022年4月から5月にかけて、陸地奥に向けて平らに整地されています。
以上